学生さん、明治から昭和の小説にかぶれてください。菜の花色の鹿革ブックカバーに志賀直哉『清兵衛と瓢箪・ 網走まで』

こんにちは。鞄工房山本の二見です。

このブログでは早くも通算100本目の記事の投稿となりました。いつもお読みいただき、ありがとうございます。
これからもこのブログを通して、鞄工房山本の鹿革製品やその他の革製品の魅力を少しでもお伝えできたらと思います。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

18色ある鹿革ブックカバーに、色ごとに合う本をご提案、新しいギフトの形になるかもしれない「ディア文庫」。
この企画を始めるにあたり、下調べをした際は、やはり色の名前そのまんまで本のタイトルを検索してみました。

結果、ありません! リサーチに楽をしようとしたらアカン、ということです。

菜の花色ブックカバーと志賀直哉『清兵衛と瓢箪・ 網走まで』

今回ご紹介する志賀直哉『清兵衛と瓢箪・ 網走まで』(新潮社)は短編集です。一番初めに収録されているのは、「菜の花と小娘」。ほぼ唯一、鹿革の色の名前ズバリなタイトルの小説ではありますが、いかんせん短編集のタイトルではないので、菜の花色のブックカバーにこの本を選んだ理由がわかりにくくなってしまいました。残念。でも選んじゃいました! 好きな本なので。

高等学校在学中に元原稿が書かれたこの作品は、作家自身処女作と位置づけていたようです。当初は「花ちゃん」という題名だったとか。かわいい……

corza flower

後年、作家となってからかなり手を加えて出版に至ったようです。少女と菜の花の会話の口調の愛らしさに微笑んでしまう小品。

元気なビタミンを感じる菜の花色に、爽やかな「菜の花と小娘」はしっくりきます。では、その組み合わせをとくにどんな方におすすめしましょうか。

電車通学の学生さんにプレゼントして、文学にかぶれてほしい

文庫本は、通勤・通学のお供になることをつい想像します。では、とくに菜の花色ブックカバーとこの本をどなたにプレゼントしたいか。

自分が学生のとき、明治から昭和の小説を読み漁ったのを思い出すと、広い括りで学生さんに。

(確か)高校の国語の教科書に載っていた『城の崎にて』が、この作家の作品ではじめて読んだものです。作家の発見の仕方としてはベタというか、つまらん出会いでした。教科書だと大抵抜粋なので、改めて自分で全部読むまで好きか嫌いかすら感じないことも多い。

志賀直哉は小説の神様とまで言われました。〇〇の神様って、いつ始まった言い方なんでしょう。ギターの神様、漫画の神様、学問の神様、あと思い浮かびませんが。

え? なんですって?
トイレの神様?

そりゃ別物です!
え?
ロマンスの神様?

頑張りますね~。

志賀氏に関しては、先にその呼び名を知ってしまったので教科書の抜粋を読んでも「そりゃうまいけど、なんだかなあ」と生意気なことを思っていました(ほんとにスゲェ生意気です。というよりアホ。顔から火が出ます)。
神様、なんて、呼ばれるもんじゃないですよね。

発表は100年前に遡る、「菜の花と小娘」

「菜の花と小娘」が発表されたのは1920年。のちに小説の神様と呼ばれるきっかけともなった『小僧の神様』と同じ年です。
いまなら〇〇の神様、神対応、〇〇王子(これは私も使っております!)と尊い OR 高貴な名前が汎濫しています。しかし、100年昔はどんなにご大層に聞こえたでしょう。
今気づきましたが、志賀氏はココ・シャネルと同じ年に生まれています。濃ゆい時代ですね~。大正デモクラシーでございます。

この「神様」という呼び名に関しては、(ここ数年又吉さんのお蔭で知名度が上がった)太宰治が、自作の中で反発して言及したことも知られています。
私が中学生の時代でも、女子中高生が日本文学にはまる取っ掛かりは結構太宰氏だったりしました。不思議です。
取っ掛かりはなんでもいいので、学生の皆様、頭が柔らかいうちに(こう言いつつ、年寄りくさいなあと自分で笑ってしまう)、栄養になるような本をたくさん読んでほしい。

なんだかディア文庫、前回からおばあちゃんのお節介的な展開になっております。でも本当に、本は芸の肥やし。そして、本(映画でも同じか)から吸収した栄養がアナタになります。
早くから始めるに越したことはないのです。

というわけで、(今まで若者に語りかけていたのが突然かわりますが)進学するお子さんをお持ちの親御さん。お祝いに本は、最初受けが悪いかもしれませんが、いかがですか。

「菜の花と小娘」に限って言うと、小学校4年生くらいから読めそうです。絵本になったこともあるようですし。
もちろん大人が読むと、響いてくるところがきっと違ってきます。私は最近読み返して、「少女同士」の妙にしっとりしたやりとりが好きでした。言葉が美しい。
他の収録作品は対象年齢が上がるので、中高生以上といったところでしょうか。この本には十数年間に書かれた18の短編が収められています。私の一番好きなのは(暗い話なので、好き、というのも妙な気はするが)「濁った頭」です。あ、今でなら即、不倫の話のカテゴリーに入れられそうな短編も入っているので中学生もまずいのだろうか。志賀さん、100年後は結構面倒です。

紙の本と、触り心地、匂い、動作、佇まい。

ところで。意外にも、今でも紙ベースの本を電車で読んでいる人が多いことを私は密かに喜んでいます。電子書籍は、バッグの中でかさばらないし、家に本があふれかえることも無いから便利なのは確かです。ただ、紙を触ってめくっていくのも読書体験の一部、本の匂い(紙とインク)も独特です。ちょっと戻って読み返したいときにも紙のほうが、気分が良い。
なにより、読む人の佇まいが、紙の本を読んでいる方が美しく思います。皆様どう思われますか。
なんて、このブログを読んでくださっている方の大半はスマートフォンからのアクセスなので、かなりの矛盾を孕んだ意見ではあります。

素敵なブックカバーありますよー、っていう話と切り離しても、紙の本は続いてほしいと思います。

鞄工房山本 二見

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