鹿・鹿・角・何本?柳田國男『小さき者の声』と薄藤色鹿革ブックカバー

皆様こんにちは。
18色の鹿革ブックカバー(15,000円/税別)に合わせて文庫本を選び、〈ブックカバー +本〉という新しいかたちのギフトを提案する〈ディア文庫〉。これまでご紹介した本の中には、自分が以前から愛読しているものも、最近偶然発掘した面白い本も含まれています。どんな経緯であれ心に残る本と出会うことは嬉しいものです。
今回はちょっと違って、本の中で鹿と出くわして、なんだか嬉しかったお話です。

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昭和35年(1960年)に書かれた柳田國男『こども風土記』

柳田 國男(やなぎた くにお、1875年(明治8年)7月31日 – 1962年(昭和37年)8月8日)は、日本で民俗学を始めたと言われる人です。一番知られている著作は『遠野物語』でしょうか。
わたしは自分が関西出身で関西弁に非常に愛着を抱いているので、方言も研究していた氏の本を少し読んだことがありました。
角川ソフィア文庫本『小さき者の声』に収められている『こども風土記』は、子どもたちが当時まだ継承していた遊びに関する考察です。1960年にすでに存続の危機にあった遊びなので、さすがの私も知っているものはありません。ええ、本当にないんですってば。
というわけで(汗)、ここに記述されている遊びがなにやらエキゾチックに思えます。

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(こちらは現代の子どもの遊び、の中でもかなり特殊なカテゴリー)

「日本人とは何か」を探すためにフィールドワークを重ねた柳田氏。ここに書かれている事例を直接知らなくても、それに似た遊びを小さい時にやっていたことはあるのでその起源を知るのは興味深い。
・ままごと
・おかあさんごっこ
・おにごっこ
はご経験のある方沢山いらっしゃるとおもいます。そのルーツもこの本の中で述べられています。

時代と共に廃れていった習慣も、子どもの日常の中では生き続けていた例が多々あったようで、氏はこの著作のなかで、子どもとかつて子どもだったひとに感謝、と書いています。

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遊び以外にも、幼児語やこどもの使う言葉が語源となっている単語の話も面白いので、言葉や雑学がお好きな方にはぜひおすすめしたい本です。
一つ例を挙げると、昔上流の家で主婦のことを「お方さま」(おかたさま)と読んでいたそうです。言葉の広がりは上流から一般の、しまいには長屋住まいのほうにもひろがり、それが子どもの言葉で「オカタサマ」「カカサマ」「カカサン」「カカ」「オッカー」となったとか。
そういえば、「母」という漢字は訓読みで「ハハ」、音読みで「ボ」「モ」「ボウ」「バ」と読むのに「カ」の音はおろか「k」すらさっぱりでてきません。今更ながら、不思議です。それは当て字で「お母さん」と書いていたのだとわかりました。

因みに私はちいさいころ「カキクケコ」が言えなかったので「おたあさん」と呼んでいたらしいです。こんな私にも可愛い時期があったのだ(笑)。

鹿・鹿・角・何本?

鹿遊び(しかあそび)というものが昭和初期以前にはあったそうです。
奈良にいて、鹿革製品を作っている鞄工房山本の人間はやはり鹿に愛着があるわけでして、そこにこんな子どもの遊びがあったことを聞くと嬉しくなります。どんな調子で言われて(歌われて)いたのでしょう。ご存知の方、もしいらっしゃったら教えてください。

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鹿遊びは日本大百科全書(ニッポニカ、小学館)の解説と、『こども風土記』の説明を合わせるとこうなります。
1. 二人で勝ち負けを競う。
2. まずはじゃんけん
3. 負けた子が窓枠か何かにつかまってかがむ。勝った子は馬乗りになる。
4. 勝った子は拍子をとって負けた子の背中を叩きながら何本か指を立て、その指の数をあてさせる。その時の文言が「鹿・鹿・角・何本」(ただし、各地で途方もなく色々な言い方がある)

※ 勝負する二人以外に行司がいるという説もあり、また、大勢で遊ぶこともあったらしい。その場合、かがんだ子どもの腰に順々につかまって長くつながり、上になる子は走ってきた勢いでかがんだ子どもたちの背に乗る、というのだから昔の子は頑丈だったのですね。
※ 明治時代に外国から伝わったものらしく、柳田氏も1959年にアメリカから問い合わせをうけています。その問い合わせをしてきた人曰く、世界中に同様の遊びが当時確認可能であったそうです。

How many horns has the buck? 鹿革と「バックスキン」の謎も

”How many horns has the buck?”
「鹿・鹿・角・何本」は英語でこう言われていたそうです。鹿は英語で deer ですが、牡鹿は buck 、牝鹿が doe 子鹿は fawn 、ってややこしいな。
今ふと思いましたが、一定以上の年齢の日本人で、スエードのことを「バックスキン」という方がおられますが、あれはもしかして昔は割とよく流通していた(牡)鹿のスエードから来ているのかもしれません。久々に脱線しました。

「鹿・鹿・角・何本」は前述のとおり各地で言い方が異なり、残念ながら奈良でどう言われていたのか『こども風土記』には書かれていません。
なぜかお隣の京都では「ペスペスこれなんぼ」と言っていたらしく、ペス……犬になってしまったのでしょうか。「鹿どっか行ってもうとるがな!」と言いたいところです。

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鹿の話はおいといても、このところ元号がかわったこともあり「日本人とは何か」を考える機会が多いので、柳田國男氏の本は今色々と読んでみたいところです。そんなことが近頃気になっているひとや、雑学好きの方が身近におられたら、プレゼントしてみてはいかがでしょう。

鞄工房山本 二見

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