歴史好きのMotherたちへの母の日ギフト『日本の歴史をよみなおす』

18色の鹿革ブックカバーに、本を合わせてギフト提案する企画〈ディア文庫〉。前回はみうらじゅんさんの『親孝行プレイ』で心構えの準備をして、母の日・父の日をより濃ゆいものにしてはどうでしょう、という提案でした。

いよいよ今回は、母の日に向けた実際の本選びをしてみたいと思います。

ここで大前提を。「母」と一括りに言ってしまっていますが、年代は? 趣味、嗜好のばらつきを考える前に、何歳ぐらいを目安にしているのでしょう。鹿革製品を実際に購入してくださるお客様の層は20代後半からが中心なので、50歳台以上ということにしましょう。

Mother たちに、女学生気分を味わってもらう。黄金色の鹿革ブックカバーに、網野善彦『日本の歴史をよみなおす』

しまった。女学生、という言い方自体古いやんか。
なんでこんなことを考えたかと言うと、これくらいの年代の方の大半が大河ドラマを欠かさず見ている→ 時代劇多い → 歴史好き多い。

歴史好きなら切り口の違う歴史本をプレゼントして、大学の講義を聞いている気分を味わってもらう。
うーむ。
なんだか前回登場した〈親孝行研究会〉からはあんまり賛同されそうにない、硬い話に聞こえます。研究会は、親たちが同世代から「若いね」と言われるようなものを勧めています。

でも実際、歴史好きのマダムたちにたくさんお会いしたことがあるのです。私だけ??

先程から、なにか違和感を感じられている方。鋭い。
書き始めから、今回プレゼントをあげる相手の女性たちをどう表現すべきか迷っているのです。だから、Mother たちと言ってみたり、マダムとよんでみたり、何がしっくり来るか、試していたのでした。
「お母さんたち」っていう表現に何故か抵抗がある。何故かと言うと、自分の子供じゃない人たちに「お母さん」と呼ばれるのがイヤな女性たちが大勢いるからです。

deerskin book jacket

私も実感したことがあります。奈良に住み始めて間もないとき、会社の給与振込先が地方銀行指定だったので口座を作りに行きました。
私「口座を開設したいのですが」
銀行員「お母さんのぶんですか?」
私「え? 母は関係ないんですけど」
銀行員「……」
私「……」
ここまで来たら、両者ともに誤りに気づきました。
私は子供が居ないのですが、年齢的に当然子供がいるであろうと言う思い込み+謎の気安さで銀行員さんは私を「お母さん」と呼んでいたわけです。彼女の質問を正しく言い直すと、
「ご本人様のお口座でしょうか(あるいはお子様のでしょうか)」
そして、カッコの中はとくに必要ありません。

昔(30年ほど前)、うちの母も、保険の集金のおじさんにいつも「ねえ、お母さん」と言われていつも嫌がっていました。あるとき遂に、「私貴方のお母さんじゃありません」と抗議。

え?
なんですって?

何を長々と。本の話はどこ行ったんや?

意識せずに使っている言葉。その意味を歴史的観点から問い直す

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(これも黄金色です。春の夕暮れ。)

そんな、日常で遭遇する偏見とはまた異なる話ではありますが、この『日本の歴史をよみなおす』を読んでいると、とくに今までギモンを挟まなかった言葉の定義・意味が覆ります。そうでなければ、思い込みのない状態で物事を考えられるようになりたい、と思うきっかけになります。

例えば、「日本」の呼び名っていつからあるのか? どこからどこまでの範囲のことだったか?

と、始めたものの。
これは、〈ディア文庫〉で私が抱えている悩み。本の面白みは、読者の皆様ご自身で発見していただきたい。ということは、引用もしたくないし、大事なポイントも明らかにしたくない。じゃあどうやって本の話をするのが良いのでしょう?? 前回の『親孝行プレイ』も「内容引用しすぎたかなあ」とちょっと後悔していました。

んがしかし、仕方がない。ひとつだけ例をあげましょう。別のやつ。
今や差別用語になってしまった「百姓」という言葉。農民を差別した言い方、ということになっています。この言葉、もともとは「普通の人」くらいの意味で、多くの職業を含んでいたそうです。というわけで、昔の記述で百姓と言われていたいろんな職業の人たちは、後になって百姓=農民と解釈されてしまいました、それによって、「江戸時代は大半の人間が農業に従事していた」ということが通説になり、教科書にも載ることになりました。そうすると、単に統計の見方が誤っているに留まらず、私達の近世に対して抱いていたイメージもぶれていたことがわかります。

さらに、「水呑百姓」という言葉も、今の感覚では「水しか飲めないくらい、とくに貧しい農民」と解釈されますが、これは実は……

時系列ではない、テーマごとの史学を楽しむ

この辺にしておきます。
自分が読んでいて、大学で面白い講座を聞いている気分になりました。文章も語っている調子で余計にそう思われます。

他に取り上げられているテーマだけ紹介します。

  • 女性
  • 天皇
  • 貨幣と金融
  • 悪党と海賊
  • 文字

など。時系列の歴史の授業が苦手だった私も苦にならず、興味深く読みました。

という調子で、マダムたちにプレゼントしたら、面白がって読んでもらえるのではないでしょうか。なんせ、わたしも「お母さん」と呼ばれたことがある位、世代が近いのですから。

鞄工房山本 二見

amino yoshihiko

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